この世界は遺伝子改良により、人間は25歳から老いることがなくなった。病気にも罹らない。
誰もが無限の寿命を手に入れた理想の世界に思えるかもしれない。だが世界はそう単純な摂理ではなかった。
この世界では全ての人の左腕に時間が表示されている。
これはなんなのだろう。意味は2つある。
①通貨
コーヒーを買うにもローンを返済するにも使える。一杯あたり:約3分〜4分?
おそらく他に通貨は無さそう。
②寿命
表示された時間がゼロになれば、心臓が停止し死亡する。例外はない。
時間が失われない限り、ほとんど死ぬことがないが、時間がゼロになれば確実に死ぬということだ。
まさしく明示された寿命である。ある意味で公平なルールだろう。
時間的富裕層と貧困層
彼らは、事故や事件などの予測できない不幸により、あったはずの時間を失うリスクをひどく恐れている。
だから命を賭けるように無謀なギャンブルはしないし、車は事故で死ぬ可能性があるから乗らずに飾るのがスタンダードだ。
常にボディガードと行動し、襲撃の危険を回避する。
いのちだいじに生きている。
時間は無限にあるので、道を走ることもしない。急ぐ者は時間に追われているものだけだからだ。
だがこれは、裏を返せば望まなければ死なないということでもある。
「貧者には死、富者には倦怠」
時間的富者には危険もなく波もない。
それが、いかに退屈な時間か、ある意味想像に難くないだろう。
正直なとこ、現代社会も人間の時間を給料に変換してるわけで……いまの世界で富んでいる人間も同じような倦怠を感じている??