ゴジラ(1954)を観た。
今更なぜ、と問われるならば……
全てはシン・ゴジラとゴジラ-1.0のため、と言わざるを得ない。
開幕スタッフロールで流れるゴジラの鳴き声、ゴジラのテーマ…………
僕らは2023年に生きていてゴジラがどんなものか知っているからけれども、
1954年公開当時に、この演出を劇場で観ていたら腰を抜かしてたかもしれない。
しかし、ゴジラのテーマのそうだけど、劇伴が素晴らしすぎないか?
全体的に戦争映画とオールドアメリカのイズムが漂っているけれども。
迫力のカメラワークと演出を見ていると、撮影技術はもうこの時代には完成されているのでは? と思ってしまう。引き込まれる重力を感じたかも。
白黒で解像度が荒いから、おどろおどろしいっていうのもあるけど、モンスターがテーマの作品は恐怖のテンポと強弱が肝要っぽい。
街が破壊されるシーンは、ミニチュアの街(なんていうんだっけ?)で暴れる
ゴジラがチャーミングすぎだった。終盤には愛着が湧いて人類に撃退されるゴジラが少しかわいそうになってくる。
あとは、随所に挟まる要素から戦後日本を感じる。
戦争終わって9年だし、そりゃそうか。
あとは…………
”これは人を殺さない戦争だが、人の業そのものと向き合う戦いである”
という戦後世界のテーマみたいなものが、約90分の映画の中ですでに表現されているのが素晴らしかった。
これが、今にも通用する価値観であることを考えると、かなり先進的な目線で作られているのでは?
…………しかし、人間のせせこましい営みが、巨大な存在に一蹴されるのって痛快だよね。
もしかすると、日常の不安やいらだちを無意識下で破壊神に仮託してしまっているのかも。
そういう意味で”ゴジラ”は誰もの心に住まう恐ろしい怪獣のフラストレーションを解消してくれる健康映画かもしれない。